speakerのH先生は,長くドイツのMPIで研究をされ,今年度から京大にもラボを持つことになった方だそうです.
植物の細胞生物学をやっている私からすると随分離れたトピックだったのですが,細胞生物学的視点が共通項としてあり,大変興味深く拝聴しました.
私にとっては,特に二つの点で印象的でした.
1.マウスの初期発生という非常にメジャーな分野においても,実は新しい発見がある.裏を返すと,記述され尽くされ古典的な教科書に載っているようでいて,実はよくわかっていない問題が残されている.
2.我々は重力の中で生きている.
1について.
「二細胞期に第二極体が細胞の間にあることは昔々から知られていて,この極体が分裂面に影響(決定)しているのではないか,と言われていたが,詳細なタイムラプス観察によって実はそうでもない,ということがわかった」
これは驚き.しかも,言ってみれば,昔と何を変えたかというと「ちゃんと細かく見た」ということに尽きます.
私は5年くらい前から,タイムラプス撮影にかなり興味を持っていて,自分でも植物個体や細胞のタイムラプス観察をもとに論文を書いたりしています.やってみるとわかるのですが,長いタイムラプス撮影で当時ボトルネックとなったのが記憶メディアと制御用のソフトです.
コンピュータテクノロジーや記憶メディアの進化とともに,これからますます「あなたの知らない○○」から新たな発見があるのではないかと期待しています.自分でもやりたいなと思っていて,秘かに画策しています.
私がタイムラプス撮影に興味を持ちはじめたきっかけは,Dr Mark Terasakiのタイムラプスムービーです.確か研究室のボスに紹介してもらったんだと思います.今でも検索すればどこかにあるはず.これは秀逸です.研究用だけでなく,いろいろなものを被写体にしています.私は「かゆい猫」が一番お気に入りですが,掃除の様子や論文投稿の様子も面白いです.
2について.
昨日のセミナーの際,
「私たちが今1つだけ考慮できていない力がある,それは重力です」
私は以前奈良で植物の重力感知のしくみを研究していたのでコメントしようと思ったんですが,既に気づいていらっしゃった,というわけで.さすがです.
重力の仕事をしてはじめて気づいたのですが,私たちは産まれてこのかたずっとずっと重力に影響されて生きているのですよね.でも,それをあえて意識することってあまりない,いや,ほとんどないような気がしませんか?
H先生の話をきっかけに,「無重力状態で本当に哺乳類は正常に発生するのか?」という問題は果たして解決済みなんだろうか,という疑問も湧いてきました.国際宇宙ステーションとかでもう実験されてたりするんでしょうか.
2 件のコメント:
セミナーのまとめ、興味深いです!
最近なかなか自分と違う分野のセミナーを聴きに行けていません。
駒場でもいろいろやっているはずなのですよね…
また行ってみようと思います。
コメント有り難うございます!
セミナー聞くのはいろんな意味で刺激になりますよね.
ブログにメモを残そう,と思っていると,聞きかた,捉え方にもポジティブな変化があるかも,と期待中です.
学会やセミナーなど,忙しい毎日にかまけて参加が滞りがちだったのですが,これからはてこ入れしようと思います!
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